ドタドタと何やら騒がしい音が、こちらに向かってくる気がする。けれど、自分には関係ないことだ。




  子犬的餌付け事情




お昼時の麗らかな陽気が教室内に指し込み、剣之助は隅の机でうつらうつらしていた。
そしてふっと眠りに落ちようとした瞬間、


―――どんっ。


と、何かが剣之助にぶつかってきた。

「いっ・・・」

その衝撃で机についていた肘がずれて、支えていた顎が思い切り机に叩き付けられる。
だがぶつかってきた方はそんなことおかまいなしに、剣之助にギュッとしがみついてきた。

「けーんのすけーっ!」

高校男子とは思えないほどの甲高い声と、その行動。
それら全てに当てはまる人物を、剣之助は一人しか知らなかった。

「ふーかーみー・・・」

机に突っ伏したまま、わなわなと拳を震わせる。
そんな剣之助を知ってか知らずか、颯太は構わずさらに彼にじゃれつく。

「ねぇねぇ!!僕、新しいお菓子買ってきたんだ。一緒に食べようよ!!」
「・・・っ、んなもんいるかっ!!」
「うわぁっ」

剣之助は抱き締めてくる腕を、起き上がって力任せに振り払うと、キッと颯太を睨み付ける。

「深水!!てめぇは毎回毎回、抱きつくなと何度言わせるんだ!!」
「え〜、だって剣之助って抱きつきやすいんだもーん」
「だっれっが、抱きつきやすいんだ!!」
「もう、剣之助だって言ってるじゃん」
「・・・・・・」

悪びれた様子もなく、さらっと言ってのける颯太に、本格的に怒りが込み上げてくる。
剣之助がどうやってこいつに地獄を見せようかと恐ろしいことを考えていると、全く危機感のない颯太がのんびりと声を掛ける。

「剣之助ってば、そんなに怒ってばっかりで、カルシウム足りてないんじゃないの?」

颯太はそう言うなり、持っていた包み紙をビリッと破いて、中身を口のなかに放り込む。
そして、なにやら口の中でブツブツと呟いている剣之助に呼び掛けた。

「剣之助、こっち向いて」
「なんっ・・っ!?」

剣之助が颯太を睨むように顔を向けると、何故か満面の笑みを向けた颯太の顔がすぐそこまで迫っていた。
あっ、と思う暇もなく、そのまま颯太は剣之助の唇に自分のそれを重ね合わせる。

「んっ、んぅ・・」

無理やり剣之助の唇をこじあけると、ころんと口に含んでいたそれを、彼の口のなかに放り込んだ。

「はっ、はっぁ・・・ふっ、深水!?」

そうして唇を解放された剣之助は、真っ赤になりながら驚いて颯太を見る。
颯太はにっこりと子悪魔的な微笑みを浮かべながら、口元に手を当てた。

「カルシウムたっぷりのミルクキャンディーだよ!!剣之助にぴったりだよね〜」
「ミルク・・・キャンディー?」

そこで初めて、自分の口のなかに甘い味が広がっていることに気付く。
そして、それが先程まで颯太の口のなかにあったということも。

「っ・・・」

あまりのことに力が抜けて、へなへなとその場に座り込む。
颯太は、そんな剣之助に駆け寄って、後ろからギュッと抱き締めた。

「おいしい?」
「・・・知るか」

クスクスと、颯太は笑う。

「剣之助ってば、顔真っ赤だよー?」
「っ、うるせぇ!!」

そんな、ピンクの空気を我知らずかもしだしている彼等は知らない。
その時クラス一同が、冷めた目で自分たちを見ていたことなど、知るよしもなかった。











可愛い子の攻めは萌えるなぁと思いまして(笑
かっこよくなるように頑張ってみたんですが・・・・・・
もっと精進しなければっ・・・!