私の愛に答えて
この気持ちに気付いて欲しいのか、そうじゃないのか。
自分でもよく分からない気持ちを持て余しながら、今日も俺はこの人と会っていた。
「悪い、志摩さん。遅くなった」
「あー、もういいよ。毎度のことだし、慣れた」
御決まりになってしまった台詞を言うと、ぷいっと顔を背けながら拗ねたように唇を尖らせる。
その姿がなんだか可愛くて、これ見たさにわざと遅刻したらやっぱり彼は怒るだろうか。
まあ確実に怒るだろうなと思い、俺は密かに苦笑を漏らした。
「ん?香ちゃん、どうかしたか?」
そんな俺に気付いたのか、志摩さんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
何でもないと安心させるために、にっこりと微笑んで見せた。
「いや、なんでもないよ」
「そっか。ならいいけどな」
不安げな顔が一転して、彼が無邪気な明るい笑みを浮かべる。
そうやって俺に向けられてくるものが凄く愛しくて、不意に志摩さんに触れたくなった。
手を伸ばしかけ、ぐっと自制する。
こんのところで、いったい何をしようとしているんだ。俺は。
気持ちを落ち着けようと、ぐるりと辺りを見渡す。
「随分と・・・メルヘンチックな場所だね」
この辺にはあまり来たことが無かったから知らなかったけど、目に見える範囲が全て花で埋まっている。
ああこういうのを、お花畑っていうのか。
「すっごいよなー。どこ見ても花ばっか」
そう言って、志摩さんが花畑のなかに入って行く。
男がこの年齢で、しかも花との組み合わせなんて、正直どうかと思う。
なのに、志摩さんだと綺麗に見えるから不思議だ。
・・・・・・いや、俺の頭が麻痺してるだけかもしれないけど。
「なぁなぁ、香ちゃん」
「あっ、ああ。なに?」
いつの間に戻ってきたのか、志摩さんがじっと俺の顔を見上げていた。
俺はすぐにいつもの笑みを浮かべて、彼のことを見詰める。
「香ちゃんってさ、ファンの子から花とか貰ったことあるか?」
ハナ?はなってこの花だよな?
質問の意図が全く分からないけど、いつものことだから対して気にしない。
曖昧な笑みを浮かべて、小さく首を傾げる。
「あー、どうだろう。多分、貰ったことはあると思うけど・・・」
「だよなぁ!!」
俺の答えを聞くなり、志摩さんが一際大きな声を上げる。
びっくりして彼のことを見ると、何故か悔しそうに顔を歪めていた。
あらぬ方向を見ながら、ぶつぶつと呟きはじめる。
「人気モデルだもんな・・・花どこじゃないよな。うー・・・おれだって花くらいさぁ・・・」
「ああ・・・」
納得して、思わず苦笑が漏れる。
志摩さんらしいというか、なんというか。
そんな彼を見詰めながら、俺は意地の悪い笑みを作った。
「なら、おれがプレゼントしてあげようか」
「へっ?」
思ったとおり、志摩さんはきょとんとして俺を見上げてくる。
「だからさ、おれが志摩さん花をあげるって」
「まっ、マジか!?」
「もちろん。マジだよ」
にっこり笑って告げると、志摩さんの顔が嬉しそうな笑みになりかけ。
すぐにハッとしたように、声を荒げた。
「って言うか、香ちゃんに貰っても仕方ねぇじゃんっ!!」
「あははははっ」
本当、志摩さんほど単純でからかいやすい人はいないと思う。
そんなところが可愛くて、ほおっておけないんだけどね。
恨みがましく俺を睨んでくる志摩さんに、ごめんと素直に謝る。
「でもさ、俺が志摩さんに花をあげるとしたら水仙だよね」
「はっ・・・すい、せん?」
「それも黄色いやつね」
「なっ、なんでだよ?」
不思議そうに尋ねてくる彼に、俺はただ静かに微笑み返す。
言葉の裏に篭めた意味。
分かっても分からなくても、どっちでもいいんだ。
ただ願わくば、あなたの傍に。
俺の願いは、それだけだから。ねぇ、志摩さん?
大分昔に書いたものをリメイクしてみました。
ですが、なんだか分かりにくい話ですみませんです(汗
一応水仙の花言葉をテーマにしているんですが・・・・
あっ、ちなみにタイトルですよ!(笑