あの夢を見るのは、きまって暑苦しい夜だった。今日もそんな夜で、なかなか寝付けなかった。
真っ暗な闇の中、俺は1人たたずんでいる。
あの時、死ぬんだったら俺でよかったはずだ。なのに、俺は今もこうして生きのびている。
どうして、俺なんかのために命を犠牲にしたのだろう。
不安で、苦しくて、必死に誰かの名前を呼んだ。
でも、ここには俺1人。返事なんて返ってくるわけないし、期待もしてなかった。
けど、確かに聞こえたんだ。誰かの声が――。
君の声が聞こえたら
「・・・グ、リューグ!!」
「ん・・・ぁ・・にき?」
頭がボーっとして、しばらくの間なにも考えられなかった。
ひとつ、わかっているのは、またあの夢を見たということだけだ。
「どうしたんだ?だいぶうなされてたけど・・・」
「・・・・・・」
「黙ってたら、分からないだろ」
「・・・・・・」
俺はなにも答えなかった。というより、答えることが出来なかった。
まだ、頭がはっきりしていないからなのか。なぜか、言葉が出てこなかった。
「ふぅ・・・。それじゃ、僕は水でも持ってくるから、ここで待ってて」
そう言うなり、兄貴はそそくさと立ち去ろうとする。
俺はハッとして、慌てて兄貴の服を掴んだ。
「リューグ?」
兄貴が不思議そうな顔をして、俺の顔を覗き込む。
そっと目線が合うと、困ったように微笑まれた。
「離してくれないと、水取りにいけないんだけどな」
「・・・・・・・ここに、いてくれ」
俺は兄貴の服から手を離し、やっとの思いで口にする。
子供じみてるとは思うけど、今は1人になりたくないのも事実で。
自分でも驚くぐらい、甘えた台詞が口を衝いて出てきた。
「1人に・・・なりたくないんだ。なんか、みんな俺の前からいなくなるような気がして・・・・」
「リューグを置いて、いなくなる訳ないだろ。僕は、ずっとお前のそばにいるよ」
「言葉だけじゃわかんねぇよ!!」
駄々っ子をあやす様な兄貴の言葉に、思わず怒鳴り返す。
言葉ほど不確かなものはない。何度、それに裏切られてきただろうか。
「だから・・・証明してくれよ。兄貴が、俺のそばにいるってことを・・・・体で、分からせてくれよ!!」
自分でも、何を言ってるんだと思う。
でも、どうしよもなく不安で、どうしたらいいか分からなくて。
こんな方法しか、思い浮かばなかった。
「わかった」
兄貴はそれだけ言うと、ゆっくりと俺のほうへと近づいてきた。
「んあっ・・・・」
服の中に侵入してきた手が、俺の胸の突起を探りあてて、おもむろにそれを摘み上げた。
自分でも信じられないくらい、いつもより甘ったるい声。
「いつもより、感じてるみたいだね」
それに気づいた兄貴は、からかうように俺に言葉を投げかける。
「はぁ・・・あんっ・・・・・」
胸の突起だけを必要にせめてくる兄貴にしびれを切らして、すがるような気持ちで兄貴のほうを見つめる。
けど、兄貴はそんな俺に濃厚なキスをひとつくれただけだった。
「んっ・・・ふぁっ・・・・・ぅんっ・・」
兄貴の熱っぽい舌が、俺の中にゆっくりと侵入してくる。
俺は、そんな兄貴をまねきいれるように、自ら口を開いて、積極的に兄貴の舌を自分のものに絡めた。
ゆっくりと兄貴の口が離れていくと、飲み下しきれなかったものが、口の端から流れ出た。
「はぁっ・・・・あ・・にき、もっと・・・・・」
「もっと、何?」
わかってるくせにと思いながらも、俺は素直に答える。
「おれの・・・さわっ・・て」
「いいよ」
そんな俺に、兄貴はクスクス笑いながら頷いた。
いつもならすごくムカつくのに、なぜだか今日はそれが嬉しかった。
「あっ・・・んんう・・・」
兄貴はゆっくりと俺のズボンの中に手をいれ、ゆるゆるとそこを扱き出す。
でも、俺はそんなんじゃものたりなくて、自分から積極的に、兄貴の手にそこをこすり合わせた。
「はっ・・あ・・・・んぅっ・・・」
やがてトロトロと先走りの液が零れ始め、手の動きに合わせてぐちゅぐちゅと淫らな音が響き渡る。
自分の甘ったるい声と重なって、妙な気持ちになっていった。
「んっ・・・やぁ・・・・あ・・にき」
「リューグ?」
俺の体が示している様に、確かに気持ちいいのだ。だが、何かが違う。
今の俺が求めているのは、こんなゆるやかな快感じゃない。
もっと、なにもかも忘れるくらい、めちゃくちゃにしてほしい。
「あっ・・・にきぃ・・」
「なに?」
「もっと・・・めちゃくちゃにしてくれ・・。ぜんぶ忘れるくらい・・・・。やさしくっ・・しないでくれ・・」
「・・・・いいの、リューグ?」
兄貴はそう言って、少し心配そうに俺を覗き込んだ。
俺が嫌がっても、もっとすごいことやるときもあるくせに。
「いまさらっ・・・何いってやがる。いいっ・・から・・・・はやくしろっ」
「それだけ憎まれ口たたければ、大丈夫だね」
兄貴はそう言うなり、自分のものを取り出すと、俺の足を目一杯広げる。
ピタリと、兄貴のものが押し付けられた。
「いっ・・・あっ」
熱い感触と鋭い痛みが走って、俺は思わず身をすくめる。
けど兄貴はそんな俺にお構いなしに、ぐいぐいと自分のものを中に押し込んできた。
さっきと同一人物とは、とても思えない行為だ。
「いったぁっ・・・んっ・・はぁ・・・・んうっ・・」
「くっ・・・キツッ・・・・」
充分に慣らしてもいないのに、いきなり挿入したために、兄貴もだいぶキツイらしい。
だが、俺の体はそれ以上に辛かった。
兄貴のものが、中に押し込まれるたびに、激しい痛みが走る。
おそらく、さけて血が出ているのだろう。
「はぁっ・・・んぅ・・いっ・・・」
「んっ・・・リューグ、平気か?」
だから、なんでこいつはこういう時だけ優しいのか。
そんなことを心の中だけで悪態をつきながら、兄貴を安心させるように自ら腰を振り始める。
「うっ・・・あんっ・・・・はっぁん・・」
「リューグ・・・」
そんな俺の様子を見て、切なげに俺の名前を呼ぶと、兄貴はいっそう激しく腰を使い始めた。
俺は、痛みも、苦しみも、不安もすべて忘れて、この快楽に溺れていく。
「あにっ・・き・・おれ・・・・もうっっ・・・」
「うんっ・・・。一緒に・・・いこうっ・・」
兄貴はそう言うと、ラストスパートをかけるように、俺の最も感じるところを、激しく攻め立てる。
「んっ・・・あっ・・あぁぁぁっ」
「リュッ・・・グ・・・」
俺は一気に欲望を解放し、そのまま意識を手放した。
俺が目を覚ましたとき、隣から誰かの声が聞こえた。
けど、またあの夢のなかにいるんじゃないかとも一瞬思う。
すぐ傍から夢の中と、同じ声が聞こえてきたから。
「ねぇ、リューグ。僕はずっと、君のそばにいるよ。だから、安心してお休み。もし、また不安になったら、僕の名前を呼んでくれればいいから・・・」
俺は、声の主に驚いた。いや、今までのことを考えれば、隣にいるのは兄貴以外にありえないのだけど。
あの時、夢の中で俺を呼んでくれたのは兄貴だったんだ。そして、俺は夢の中で兄貴を呼んでいたんだ。
そう思ったら、なんだか恥ずかしくて、でもなんだか嬉しいような気もした。
それじゃ俺はお言葉に甘えて寝るかな。
そう思い、誰にも気づかれないような声で、ボソッと呟いた。
「ありがとよ、バカ兄貴・・・」
リューグ誘い受けです。
いっ、如何だったでしょう?
皆様の反応が怖いところです・・・。
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