どこからか、自分たちを探している声が聞こえる。
だが彼はそんなものなど聞こえないかのように、触れ合わせている体をさらにきつく抱き締めた。
「ちょっ、ライ!!」
「何だよ、アルバ」
咎めるような声も何処吹く風で、後ろからその少年――アルバの顔を覗き込む。
アルバはなんとか自分を拘束している腕を振り払おうともがきながら、さらに声を張り上げた。
「何じゃなくて!!皆、おいら達のこと探してるよ!!」
「別に、ほっときゃいいさ」
「よくない!!離せってばっ」
「イヤだ」
ライにさらっと否定されて、アルバはキッと彼のことを睨み付ける。
だがライはそんなアルバを面白そうに見遣りながら、さらに腕の力を強めた。
からかうように、アルバの顔を見上げる。
「だったら、自力で振り解けばいいだろ」
「うぐっ・・・」
分かっているくせにそんなことを言ってくるライに、アルバは返す言葉を失くしてしまう。
ライはアルバよりも小柄なくせに、幼い頃からの鍛錬のせいか、力だけはやたらと強い。
アルバとしては悔しいことこの上ないのだが、だからと言ってどうなるものでもない。
ムッとしながらも抵抗するのを止めたアルバは、後ろから自分を抱き締めているライと視線を合わせた。
「本当に、行かなくていいのか?」
「・・・・・今は」
「え?」
ライが俯くようにしてぼそりと呟いた言葉がよく聞き取れず、アルバは小首を傾げる。
彼は意を決したように顔を上げ、頬を少し染めながら、上目遣いがちにアルバを見つめた。
「今は、アルバと一緒にいたいんだよ。たまには、オレに1人占めさせてくれたっていいだろ?」
「らっ、ライ!!?」
かぁっと、アルバの頬に一気に熱が集中する。
あまりにも予想外な台詞にどうすればいいか分からず、意味も無く視線を彷徨わせてしまう。
ライはアルバのあまりの狼狽ぶりに、笑いが込み上げてきた。
彼のことが、可愛くて可愛くてたまらない。どんな時も、必ず自分が守り抜いてみせる。
もちろん、自分とそう年の変わらない、しかも男に抱く感情ではないと分かってはいるが。
だからっと言ってこれはもう、止められる感情では無いのだ。
自分も、そして―――。
「アルバ」
まだ幼さの残る、しかし何処か艶めいた声で、その名前を呼ぶ。
アルバはハッとして、おずおずと遠慮がちにライのことを見返した。
「オレと一緒は、イヤか?」
「いっ、嫌なわけっ・・・・」
真剣な瞳で見つめられ、思わず言葉に詰まる。
だがアルバはしっかりとライを見つめ返し、体に回されている両腕にそっと手を添えた。
「イヤ・・じゃ、ないよ。おいらも、ライと一緒にいたい、から」
「アルバ・・・」
照れながらもしっかりと言葉にしてくれたことに、ライはふわりと顔を綻ばせる。
そしてそっと、自分の顔をアルバのそこに寄せた。
「ららっ、ライっっ!!!?」
ただ掠めただけのような、しかしそこにはしっかりと彼の温もりが残っていて。
上擦ったアルバの声に応えるように、ライは悪戯っぽく微笑んだ。
「ばっ、バカ!!」
怒鳴り声が辺りへと響き渡り、2人の甘い時間は、そろそろ終わりをむかえようとしていた。
できあがってるライアル。
後ろからギュって好きなんです(笑